ロシアファッションヒストリーです。前回は1991年以降、ロシアで出版された西欧からのファッション雑誌を取り上げました。今回は1991年以降にロシアで創刊された女性向け雑誌全般について紹介いたします。
ロシアが生んだ雑誌
1993年以降の、最初のロシア独自の女性雑誌は«Империал»「インペリアル」誌です。この雑誌は、ロシア崩壊後裕福となった人々へのビジネス書だったためか、発行部数も多くはなく、ブログ筆者が検索しても画像は出てきませんでした。
その後、ロシアでは、自国制作の女性向けの雑誌として«ОНА(SHE)», «Gala», «Красота и здоровье»「Beauty and Health」, «Женское здоровье»「Women’s Health」, «Домашний очаг»「Home」, «Женские хитрости»,「Women’s Tricks」 «Fashion Collection»、«Лиза»「リサ」, «Verena»「ヴェレナ」, «Даша»「ダーシャ」, «Anna»「アンナ」, «Sabrina» 「サブリナ」など、多くの人気雑誌が創刊されました。
他に、«Сударушка»「スダルシュカ」(これはロシアの新聞「Evening Moscow」誌の女性向け付録), «Натали»「ナタリー」, «Дочки-матери»「母と娘」, «Деловая женщина»「ビジネスウーマン」, «Женское счастье»「フェミニン・ハピネス」など、女性向けの新聞タイプのものが登場しています。
さらにロシア国産の雑誌の中でも大きな話題を集めた雑誌«ПТЮЧ»「PTYUCH」, «ОМ», «Амадей»「Amadeus」, «НАШ»「OUR」, «Красный»「Red」の登場の時代でもあります。国内の女性誌は20世紀の初めに成功したユニバーサルタイプのもの、つまり女性の話題の総花的なものに戻り始めましたが、当初はロシア市場に来た西洋の出版物と競争できるほどの人気を獲得できなかったというのが実情です。
それではこの時代のロシア女性誌、2誌を詳しく取り上げます。
«ПТЮЧ»「PTYUCH」(1994年9月から2003年2月)
編集は、エレクトロニック楽器のミュージシャンおよびDJであるイゴール・シュリンスキーが率いるクリエイティブチームによってなされました。雑誌は若者文化のファッショントレンドをテーマにしています。1994年から1997年まで存在していた雑誌と同名のクラブとともに、この雑誌はロシアの夜遊び(レイブ)の時代のシンボルになりました。記事の中には、ドラッグを含む当時の若者の世相に関するものもありました。抑圧の時代から、自由になった社会の反動でしょうか?
さて、編集長のイゴール・シュリンスキーの近況ですが、現在クラウドファンディングで資金を募り、1990年代の芸術に関する小説を出版しようとしています。
特段の政治的意図のない雑誌でしたので、今でも息長く読まれているようです。
21世紀の初頭からは、女性誌に限らずあらゆる出版物はそのオンラインバージョンを提供し始めました。こうした形式での雑誌はもはや月間や習慣の形式では考えられなかったタイムリーなセクションを有することができるようになりました。
オンライン出版物は、情報の配信速度の速さ、幅広いビジュアル情報の可能性、ビデオコンテンツ、スキャンダル性が高く、また印刷物と比べて独占性が低いという特徴があります。
現在ロシアの女性のオンライン出版物は3つの主要なタイプに分類することができますが、ロシアに限ったことではありませんね。
「クローン」:このカテゴリー出版物は、従来のメディアの単なるコピーです。つまり、印刷された出版物の複製がインターネットにあがり、PDFでダウンロードするというタイプです。ロシアではこのタイプの雑誌は通常、低価格カテゴリの国内出版物で使用されます。
「ハイブリッド」:このタイプの出版物は、いわば印刷物の修正版です。ハイブリッドは、オフラインの出版物とはほぼ無関係に、独立した内容を伝えます。
ほとんどの場合、毎日更新されます。印刷媒体で公開された資料に加えて、オンラインバージョンには、アーカイブ、関連トピックに関する追加の記事などが含まれています。読者は、フォーラムで議論し、新しいトピックと問題を提供します。オンライン出版物に配置された多数のアンケートもこれに貢献しています。人気雑誌のほとんどはこの、ハイブリッド形式をとっています。
オンラインプロジェクト:この種の女性のオンライン出版物がネットワーク上で発生しており、このカテゴリーの雑誌にはオフラインの印刷物はありません。ターゲットは主にIT技術に堪能で、社会的にアクティブで、ビジネスを展開するかなり裕福な読者です。次のようなさまざまなターゲットグループ向けのオンラインプロジェクトがあります。課金制のブログやYoutubeなども、内容によってはこのカテゴリーですね。
独立した現代女性向け:«Женские страсти»「女性の情熱」
伝統的な態度と価値観を持つ若者向け:«Губнушка»「グブヌシュカ」
美容:«Красота онлайн»「Beauty Online「」、«Beautytime»Beautytime
ファッション:«Intermoda»
明確に定義された対象読者が無いもの:«WWWoman»、«Woman Journal»
いかがでしたでしょうか、今回は1991年以降のロシア国産雑誌とオンライン情報誌をまとめてみました。特にオンライン情報誌は2000年初頭から現在まで続いているものを取り上げましたので、ウェブサイトに訪問していただければ過去から現在までの変遷をたどることができると思います。
さて、次回ですが、現在のロシア女性誌の状況をまとめたいと思います。やはり、西欧の雑誌のプレゼンスは大きく、どれだけロシアらしい状況をお伝えできるかわかりませんが、むしろ、情報が如何にグルーバル化されているか、商業化されているかにお気づきになるかもしれません。楽しみにしていてください。
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